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関根章斗×株式会社Perma Future【長期インターン体験談】

「コロナ禍じゃなかったら、『あのプログラム』には参加していなかった。
そうなると『農』にも出会わなかった。あれは間違いなく自分の転機でした。」

まっすぐな眼差しで語るのは、関根 章斗(せきね あきと)さん。
早稲田大学 人間科学部 3年生だ。

現在、2社での長期インターンをしながら、
一次産業情報サイト「NIPPON TABERU TIMES」の編集部として活動している。

1社目の長期インターン先は株式会社Perma Future(パーマフューチャー)
パーマカルチャー(※)を継承し、暮らしとしての「農」の価値観を社会に広げていく活動を行う会社である。2022年4月から現在(2023年8月)も活動中だ。

2社目は、早稲田大学ベンチャーズ(WUV)
こちらは、学問の活用を図るスタートアップ企業を創設し、資本出資をするVC事業(※)の会社。
2023年8月に入ったばかりである。

コロナ禍だからこそ参加した「あのプログラム」で「農」に出会えたという関根さん。

人生を変えた「あのプログラム」とは。

そして、関根さんの長期インターンとの出会い、挫折、成長過程を追っていくことで、
あなたが「やりたいことをみつける」ための一つのきっかけになれば嬉しく思う。

(※パーマカルチャー……パーマネント【永続性】/農業【アグリカルチャー】/文化【カルチャー】 の3語を組み合わせて造られた言葉。「永続可能な農業をもとに、永続可能な文化、即ち 人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法」と定義されている。)
(※VC事業【 Venture Capital/ベンチャーキャピタル】……未上場のスタートアップに出資する投資会社)

「やりたがり」な僕だった

神戸に生まれ、東京で育った関根さん。

幼いころから「食べる」ことが大好きだったという。

「小学生のころは、結構なんでも『やりたがり』でした。学級委員にも立候補してたな。」

中学受験をし、中高一貫男子校へ進学。
6年間テニス部に所属して、男子校らしい賑やかな学生生活を送った。

大学付属の中高であったが、関根さんは別の大学を受験。
見事、志望校の一つであった早稲田大学に合格した。

今でこそ、2つの長期インターンをしているが、もともと興味があったのだろうか?

「先輩がやっていたので、『いつかはやりたいなぁ』くらいで、1年生のころはずっと先の話だと思っていましたね。」

そんな関根さんの身に、人生の転機となるある機会が訪れる。

運命をかえた「Green Innovator Academy」

大学1年生の9月。

「友人に誘われたんですよね。知り合いのつてで紹介してもらったとかで。選抜制のプログラムでした。」

Green Innovator Academyは、「脱炭素人材養成」を掲げたプログラムである。

温室効果ガス(主にCO2)排出量を、実質ゼロにするための取り組みである「脱炭素」。
そのための必要な知識やスキルをもつ人材を育てる養成プログラムだ。
一般社団法人Green Innovationが、同じ志の企業や政府、自治体などと協業し、主催している。

しかし、どうしても気になった。

なんとなく誘われて、なぜわざわざ「難しそうな選抜制プログラム」に参加しようと思ったのだろう。

「単純に『脱炭素』に興味がわいたのもありますが……正直な話、『福島第一原発の視察に無料で行ける』というのに惹かれちゃって。コロナ禍でどこにも行けず辛い日々だったので、なかなか行けない場所だし、どうしても行ってみたくて。」

もしコロナ禍でなかったら、日々の充実と忙しさから、参加しようとは思わなかったという。

有り余る時間と、行動制限され続けた息苦しさ。この状況こそが、関根さんの背中を押したのだ。

そしてプログラムで、のちの長期インターン先となるPerma Futureの代表 池田航介さんと出会った。

「グループワークの班が同じだったんです。知らない世界の話を沢山きけて、空っぽな自分が全吸収する感じがして、本当に貴重な経験でした。」

7か月にわたるプログラムが終わるころ、池田さんから会社の人材募集をしているという話を聞いたという。

「熱意があり、ついていきたくなるような人で。会社への想いを聞いて、ワクワクしてきちゃって。人材を欲している今がタイミングなのかなって思って、働きたいですと伝えました。」

大学2年生の4月。こうして関根さんの人生初の長期インターンが始まった。

プログラムを終えて気付いた「農」へのめざめ

「Green Innovator Academy」の参加で感化された関根さんは、「自分の興味があること」について考えることが増えた。

食べることが大好き。そしてあるドラマとの出会い。

「農」に意識が向いたきっかけは、高校生時代にさかのぼる。

「『下町ロケット』というドラマを観て、農業の話が出てきたんです。そこで自分は食べるのが好きなのに、作る側の人のことは何も知らないなぁと思って。そこからなんとなく、農業に対する興味が芽生えたんです。」

関根さんの頭の片隅に、「農業」という文字が刻まれた。

農業の「悪い面」も知り、さらに興味が・・・

「例のプログラムでも農業の話が出てきて、実は農業は環境に悪いこともあると知ったんです。」

農業生産は、田植え後の水田や家畜のげっぷなどにより、温室効果の高いメタンや一酸化二窒素を排出する。
全体の割合でみると極端に高いわけではないが、世界中が抑える動きになっている今、農業分野でも今後の課題となっている。

加えて、過剰な生産や消費によるフードロス問題。
一次産業である農業生産の現場でも、過剰生産や規格外野菜の廃棄など、さまざまな問題があるという。

「自分が好きな『食』を作り出す農業にも、こんな問題があったんだとさらに興味が湧いたんです。」

「第二次やりたがり期」突入

「プログラム」に感化された関根さんは、ワクワクな気持ちで溢れていた。

長期インターンのほかにも新たにサークルに入り、そのサークルから沢山の輪が広がった。

そんな「第二次やりたがり期」に突入した関根さんの軌跡を辿っていく。

断られ、断られ・・・初めての挫折

Perma Futureで始まった長期インターン。実際にやってみてどうだったのか。

「皆年齢が近いのもあり、温かい現場でした。ただ、楽しみな気持ちだけで飛び込んでしまい、正直最初はギャップが大きかったです。学生とは違って、何ごとも簡単にはいかないなって。」

「一番難しかったのは、会社が販売している商品の売り込み営業。複数の会社を回ったけど一つも決まらなかった。現実を知りました。」

厳しさを目の当たりにした関根さん。

「自分の覚悟も甘くて、あたふたしていたなと。その場では商品を受け取ってもらえても、後日連絡がつかなくなるとか。やっぱり苦しかったですね。」

そんな苦しみの中で、関根さんの考え方に少しづつ変化が出てきたという。

「指示を待って受け身になってしまう自分がいて。だんだんと、自分から学びにいかないといけないことに気付き始めました。『自分は今なにができて/したくて/してほしい』かをしっかり伝える必要があるんだと。」

明確な意思表示をすることで、相手にも考えが伝わりやすくなり、自分がやるべきことが見えてくるとわかったということだ。

自分の強みを発揮できた、「No 農 No Life(ののの)」

2023年6月、Perma Futureの新たなサービスとして「No 農 No Life(ののの)」が始まった。

午前中は農業をして、午後は農家さんが用意するコワーキングスペースで自分の仕事ができる。「農ケーション」を提供するサービスである。

関根さんは、このサービスのSNS担当業務をおこない、その後のデータ分析もしている。

「分析してると、伝えたい内容と、メインターゲットが求める情報の違いが見えてきて。社内の人はみんな農業が好きだから、魅力ばかり発信したいけど、メインターゲットのテレワーカーの方は、かならずしも農業に興味があるわけではないので。」

テレワーカーの需要を受けながら、農業の魅力も伝えたい。
そのためにも、実際にテレワーカーへのヒアリングもおこなっているという。

「農家にとっても人手不足を解消できる。逆に都会にいながらも、手軽に農作業に触れたい人ももっといるんじゃないかと思うんです。」

テレワークが日常になった今だからこそ、更にニーズが増えていきそうである。

農業サークル「こだま」で叶った2つのこと

大学2年生の始め、関根さんは「地域活動と農業」に関わりたいという理由から、サークルを探した。そして農業サークル「こだま」に出会った。

埼玉県本庄児玉地域での農業体験やボランティア、さらにマーケティングなど、農業に加えてビジネススキルも学べる魅力的なサークルだ。

ぴったりなものに出会えたと感じた関根さんは、大学2年の春に入会を決めた。

さらに現場へ近づきたい

「こだま」では、期待通り多くの経験ができたが、何よりも「人脈」に感謝しているという。

現在編集部として関わる「NIPPON TABERU TIMES」も、「こだま」が影響しているというのだ。

NIPPON TABERU TIMESは、「食」を作り出す生産者のための一次産業情報サイト。情報で一次産業を盛り上げていくことを目指している。

「もともと、こだまの先輩が関わっていたこともあり、存在は知っていたんです。
たまたまサイトを見たら、『ライター募集』とあって。」

大学受験を機に、文章に興味を持ち始め、いつか挑戦してみたいと思っていた「ライター」。

また、サークルで関わってきた「直売所」での経験から、さらに先の「農家」の声を聞いてみたいと思っていた。

NIPPON TABERU TIMESでは、実際に農家へ出向き取材ができる。そして、記事が書ける。

「今の自分がやりたいことにぴったりで、思い切って連絡しました。」

ここでも関根さんは、湧き上がる「ワクワクする気持ち」を大事にした。

そして現在、農家の生の声・魅力を届けるべく、取材活動に奮闘している。

2社目の長期インターンは、意外な分野へ

2社目は「早稲田大学ベンチャーズ(以下WUV)」。

「学問」に関するVC事業は、一見、農業とは全く別方向にみえる。しかし、関根さんからは意外な答えが返ってきた。

「実はこれも農業が関わっているんです。まずこの会社を紹介してくれたのが『こだま』の先輩なんです。」

再び、「こだま」が輪を広げてくれたという。
きっかけは何気ない会話からだったそうだ。

「正直、農業はお金になりにくい分野だと実感していて。農業活性化のためにも、お金にする力も身につけてみたい。そのためにまずは、お金に関することを学びたいと思っていたんです。」

何気なく話したその言葉を聞いて、先輩が、WUVを紹介してくれたのだ。
先輩はWUVで長期インターンをしており、近々留学を機に抜けるという話だった。

VC事業をおこなうWUV。

分野は違えど、投資や支援金など、お金の流れや仕組みの知識も身に付き、とても良い勉強になる。

関根さんは「今がタイミングだ」と決定に至った。

自分の中の「ワクワク」を信じてみて

「少しでもワクワクしたら、その気持ちのまま飛び込んでみる。

僕の参加した『プログラム』も、一回足を踏み入れてみたら、そこから『農』に出会い、可能性が広がりました。あの時こんなに良いことがあったから、次も大丈夫、と思えるんです。」

関根さんは、「農」に出会えたことで、長期インターンや、編集部、農業サークルに出会えた。

「農」は実に多くのものに繋がっていることがわかる。

「農」は「食」の源。

人の生活とは切っても切り離せないものである。

スーパーで売られる身近な野菜や果物も「農」。

あらゆる場所でみられる「農」が、私たちの暮らしを豊かにしている。

最後に、学生へのメッセージを頂いた。

「会社は利益を出さないといけないから、皆本気で挑む。ついていく大変さはあるけど、努力するだけでも、精神面が鍛えられると思います。その『本気度』を知れることは、かなり大きい。」

あなたも、ひょんなことが人生の転機になるかもしれない。

そのできごとが成功体験になり、次への自信に繋がる。

そして自分の中で高まる「ワクワク」を見逃さず、心のままに踏み入れてみてほしい。