今回話を伺ったのは、関西学院大学経済学部4年の 佐保 健太郎(さほ けんたろう)さん。
大学3年生の1年間を休学し、1年遅れてこの春卒業予定だ。
在学中の2022年1月に株式会社Motivateを設立し、学生起業家となった。
現在は採用支援と人材紹介、その中でも関西圏特化の長期インターンの求人サイト「Advans」を運営している。
「関西の長期インターン=佐保」と言われるまでに急成長中だ。
佐保さん自身も、2社で長期インターンを経験した。
「大手旅行予約サイトを運営する上場企業」(大学3年9月〜12月)と、「SNSマーケティングのベンチャー企業」(大学3年1月〜4月)だ。
今回は、佐保さんが長期インターンに出会ったきっかけや、モチベーションの高さの秘訣を、じっくりと聞いていきたいと思う。
投資生活を夢みる、内気な少年時代
兵庫県神戸市で生まれ育った佐保さん。
幼少期は今では考えられないほど、おとなしい子だったという。
「二卵性双生児の一人だったんですが、姉は楽観的なのに、僕は本当に内向的でした。」
教育熱心な両親に育てられ、ピアノ、水泳、習字、囲碁など、たくさんの習い事を経験した。
二世帯住宅で祖父母と同居していた佐保さんは、祖父と過ごす時間が多かった。
「祖父は、実業家兼投資家でした。そんな姿に憧れた当時の僕は、投資だけで、不労所得で生きていくのが夢でした。」
おじいちゃんっ子でおとなしい少年。
今の佐保さんの姿からは、なかなか想像がつかない。
彼を今のような姿に変えたきっかけが、とても気になった。
黙って耐えるしかなかった辛い過去
「実は、ずっといじめにあっていたんです。」
小学4年生から中学2年までの4年間、いじめは続いたという。
当時ふくよかだった見た目をからかわれたり、机を蹴られたり……
「ずっと死にたいと思っていました。でも親に話すこともできず、ただ黙って耐えていたんです。」
家族に迷惑がかかるからと、不登校にもなれず、むしろ皆勤賞だというから驚く。
しかし、酷いいじめに耐えかねた佐保さんが、生まれて初めて立ち向かったことがあった。
「学校の廊下で1対1の喧嘩をして、なんと僕が勝ったんです。すると、囲んで野次馬していた40人ぐらいから歓声があがったんですよね、『佐保、やるやん!』って。」
これがいじめの最後の日になったことを、佐保さんは鮮明に覚えている。
内向的なマインドに変化が訪れたのは、この日からだった。
下剋上が快感に!勝負することの楽しさ
いじめられない楽しい日々。
だんだんと、自分で自分を見る目が、変わってきたという。
「こんな僕でも下剋上できたんだ、現状は自分でも変えられるんだ。
これが自信になり、その後の軸になっていったんです。」
自分にも「認められる価値がある」ことを知った佐保さん。
そこからは、自分の外見にも磨きを入れ、勉強も頑張ることができたという。
「下剋上が快感になっていって、勉強でも、競争心が湧き上がるようになったんです。」
高校で入った新聞部では、全国大会1位という成績を残し、AO入試で関西学院大学へ。
テニスサークルに入り、仲間とわいわい楽しく過ごした。
佐保さんも、いわゆる「普通の大学生活」を謳歌していたのだ。
順風満帆な日々であったが、大学2年生の秋頃、好きになった女性に振られてしまった。
「あなたを尊敬できないから」という理由だった。
「確かに当時の僕は、授業の課題もギリギリで、だらしない大学生だったんです。でもその言葉で、僕の闘争心に火がつきました。」
彼女に見合う人間になるために、佐保さんは「誇れる自分になろう」と決めた。
そこで、ゲーム配信に挑戦。しかし、登録者21人で挫折。
めげそうにもなったが、それでも何かできないか、探し続けた。
そこで思い立ったのが「起業」だった。
もともと、起業家であった祖父の影響もあり、ずっと頭の片隅にあったという。
そして大学3年生の5月頃、大学のポータルサイトをみていたところに、たまたまあるプログラムをみつけた。
迷って迷って、飛び込んでみたプログラム
佐保さんがみつけた「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」。
株式会社ウィルフ連携の、起業支援プログラムだ。
半年間で3回の起業体験を積みながら、経営スキルを学ぶことができる。
「正直、とても迷いました。でも、『自分を変えるんだ』という強い思いで、勇気をだして飛び込んでみたんです。」
そしてセミナーの中で、佐保さんは実際に3つの事業を達成することができた。
「自動車での不用品回収や、就活系インスタグラムの運用など、どれもしっくりこなかったんです。
唯一成功したのは、合同説明会の企画・運営。企業への営業も、今後に生かせる貴重な経験になりました。」
そんな中、ある企業の方から、貴重なアドバイスがあった。
「起業したいなら、どんな目的で事業をしていきたいのか、明確なビジョンを作った方がいい」というものだった。
「自分は、どんなビジョンで学生と企業を繋げているんだろう……」
日々考えていくうちに、佐保さんは「学生に『働かされるのではなく、働きたいと思える環境』を提供したい」と思っていることに気が付いた。
「働く」という言葉の概念を変え、再定義する。というビジョンが確立した瞬間だった。
とはいえ、並行して就活も続けていた佐保さん。
短期インターンや企業説明会など、計50社以上を訪問し、「自分が本当にやりたいこと」を模索する日々が続いた。
「大手」「ベンチャー」両方の貴重な経験
起業支援プログラムに参加しながら、佐保さんは2社で長期インターンをおこなった。
大手旅行予約サイトでの長期インターン
短期インターンをした会社から誘いがあり、関西支社にて長期インターンをすることになった。大学3年の9月のことだった。
佐保さんが配属されたのは、新規開拓営業。
ホテル側にアポを取り、「航空券とのセットプラン」を提案する部署だ。
「僕の業務は、既存取引先に向けた架電営業だったので、実質ルート営業のようなものでした。でも、近くにいた先輩が新規開拓営業をしていたので、それを見ているのが本当に勉強になったんです。」
声のトーンが上がるタイミングや、気候の話でお互いがリラックスした空間を作るなど、アイスブレイク(緊張を和ませるコミュニケーション法)→提案→クロージング(商談契約への最終段階のフェーズ)の流れを、先輩のリアルな姿をみながら、学ぶことができた。
また、社長目線での「社員へのタスクの振り方」「目標・権限の与え方」「IR(※)を見て、投資家層を分析する」など、大きな会社ならではの体制を知ることもできた。
※IR……Investor Relations。企業が株主や投資家に対し、財務状況など投資の判断に必要な情報を提供する活動全般を指す。
SNSマーケティングベンチャー企業
長期インターンを終えた佐保さんは、すぐに次の行動をとった。
「その時、プログラム内で就活系のインスタグラム運用をしていたんです。そこで、SNS運用のノウハウを学びたくて、見つけたのがこの会社でした。」
当時、就活系インスタグラムのなかでも、トップクラスにフォロワー数も多く、実績があるベンチャー企業だった。運良く長期インターン募集があったこともあり、大学3年生の1月、思い切って飛び込んだ。
佐保さんが任されたのは、新規事業の立ち上げだった。
内容は、就活メディア内で、企業に記事掲載の営業をかけるというものだった。
過去の新規営業の経験が功を奏し、戸惑うことはあまりなかったという。
「もちろん、新規開拓は大変なことも多いです。でも、0から考えて行動することは好きなんです。それをさせてくれるのが、ベンチャーのいいところ。最終的に、1か月で3社の成約を達成しました。」
運命的な出会いから、夢の起業の道へ
「プログラムのOBOG会に参加したんです。その時に出会ったのが、守高成悟(もりたかせいご)さんでした。」
守高さんも長期インターンを経験し、起業への思いもあったという。
「自分には営業経験があって、彼にはITスキルがある。二人の強みを融合して、事業を立ち上げようという話になりました。」
そして2022年4月、関西圏に特化した長期インターンシップの求人サイト「Advans」の構想が生まれた。
「働くを再定義する」というビジョンのもと、「目的意識(動機=モチベーション)をもって働く人を増やしたい」という思いが、会社名にも込められている。
並行して就活を続けていた佐保さんだったが、唯一行きたかった企業には、残念ながら落ちてしまった。
「内定をいただいた企業もあったのですが、辞退してしまいました。理由は、自分の会社で挑戦してみたくなったこと。そして60社以上のクライアント様と、優秀な会社のメンバーを手放したくない、という思いが捨てきれなかったからです。」
自分への「動機付け」は、至ることに潜んでいる
会社名である「Motivate」には「動機付ける」という意味がある。
佐保さんのように、好きな人のために「起業」を目標にするのも、立派な動機づけだ。
今、自分の将来に迷う人も、佐保さんのように「動機付け」となるできごとが、ふいにやってくるかもしれないのだ。
今の佐保さんの目標を聞いてみた。
「関西圏の長期インターンは、まだ市場が小さいんです。目先は、今の事業を続けながら、関西の学生と企業に長期インターンを広めていきたい。」
「まだ考え中ですが、別のサービスも立ち上げたいと思っています。自分のサービスで、より多くの人の人生を良い方向にモチベートしたい。」
皆を幸せにすることで、自分も満たされる。
佐保さんは、「自分が」人を幸せにできたと思えることで、「自分」を認めてあげられるようになるのだ。
さいごに
学生に向けて一言をいただいた。
「僕は関西にいて、長期インターンという言葉を知らなかったんです。
時給を貰って、企業の部署に配属させてもらいながら、社会のリアルが体験できる。こんな環境があったのか、とつくづく思います。それが長期インターンの凄さなんですよね。」
関西圏の学生で、長期インターンに興味をもったら、「Advans」をのぞいてみてはいかがだろう。
もちろん無料で面談から長期インターン先の提案までしてくれる。
その一歩が、周りの学生より「頭ひとつ抜けるチャンス」となるかもしれない。