「日々楽しんで働き、生きていく」
シンプルに聞こえるが、これができている人は意外と少ない。
2023年のグローバル就業環境調査によると、日本人の仕事満足度はわずか5%で世界最低だった。
西南学院大学人間科学部4年の里村 優衣(さとむら ゆい)さんは、「大学生を明るい社会に導く手助け」をする会社で、長期インターンをしている。
good luck株式会社は、「学生のキャリア選択に革命を起こす」というビジョンのもと、「仕事塾」という大学生のキャリアを応援するコミュニティ事業をはじめとする3つの事業を展開している。
将来に漠然と不安を抱える学生に、彼女の等身大の思いが届けば嬉しく思う。
人前に出るのが好きだった幼少期
「目立ちたがり」が出会わせてくれた特技
福岡県北九州市で生まれた里村さん。4つ上の兄と、賑やかで楽しい幼少期を過ごした。
「学芸会では『主役をやりたい』と手を挙げるような子。学級委員長もやるタイプでした。『関心・意欲・態度』の良さでここまでやってきたようなものです。」
天真爛漫に話す彼女は、目立つことが好きで、積極的な子だったという。
中学では美術部、高校では書道部へ。「先輩の舞台での書道パフォーマンスに魅了されたから」という理由で、書道部に決めたそうだ。
「正直普段の練習が、単調で地味で。辛くて辞めたかったけど、あと少し頑張ってみようと思って。すると、高校の県大会で特選を取ることができたんです。」
すぐに辞めなかったところに、里村さんの逞しさを感じる。
「何事に対しても、あと1回だけ本気で挑戦してみて、それでもだめなら諦めよう。そうやってこれまでやってきたんです。単純に負けず嫌いなのもあります。」
たしかに、「常に成功するまで何度も挑戦し続ける」というモチベーションだと、疲れてしまう。
「あと1回だけ頑張ってみる」という自分へのワンチャンスの認識が、やる気に繋がるのかもしれない。
「無双状態」だった全盛期
「書道で特選を取り、希望の大学にも合格した。当時の私はなんだってできる気がしていたんです。」
憧れの人に会いたいと、アナウンサーを夢みるようになった里村さん。
そのために今できることを考え、ひとつずつ達成していく計画を立てた。
「大学に入ったらミスコンにでて、アナウンサーへの道作りをしようと考えました。
まずは高3の春休み、人脈作りのために、福岡ドームのビールの売り子をしようと決めました。」
面接を受け、見事合格。
しかし、入学目前。雲行きの怪しいニュースが飛び込んできた。
「夢」をなくしてしまったら
まさかの事態で崩れた「夢」
「新型コロナウイルスのニュースが飛び込んできて、売り子の仕事は白紙に。無観客試合では売り子は必要ないので……」
アナウンサーになるために、やるべきことを逆算しながら計画を立てていたものが、全て崩れ去っていった。
売り子で人脈作りに励みたかったのに。
サークルに10個入り、友達を100人作ろうと思っていたのに。
ミスコンも、きっと開催されることはないだろう。
もしかしたら、大学卒業まで、やりたかったことが何もできないかもしれない。
悶々とした毎日を送るうちに、「アナウンサーの夢」自体への疑問がうまれはじめた。
「全ての計画が台無しになり、無気力になってしまって。アナウンサーの夢も、本当にこれでいいんだっけ?と分からなくなり、夢も希薄になっていきました。」
動いて、動いて、見えてきたもの
夢が霞み、何をすべきか途方に暮れていた里村さん。
付随して、過去の失敗や辛いことが蘇り、ずるずると悔やむ日々が続いていた。
そんなある日、兄と話をしている時に、ある言葉をかけてくれたという。
その言葉が、暗闇にいた里村さんをまぶしく照らしてくれた。
「過去の自分が嫌なら、今この瞬間から自分を変えるしかない。
過去や事実は、いくら悔やんでも変わらない。とにかく『行動』で示していってごらん。
今は敵にみえるかもしれない人たちも、だんだん自分を見てくれるようになる。
味方が自分の近くに集まり、見える世界が変わってくるよ。」
里村さんはハッとしたという。
過去や現状に満足していないなら、今この瞬間から行動してみる。
頑張っていれば、きっと見てくれる人がいる。
そこで出会える素敵なひとたちがいる。
里村さんに、希望が見えてきた瞬間だった。
そこからは、とにかく思いついたことをやってみた。
兄の言葉のおかげで、信じられないほど行動できるようになった自分がいた。
「夢は諦めたけど、再開されたミスコンにも出場することができました。
小さなことでいえば、一人でドーナツ食べ放題してみたり、ふらっと観光地に行ってみたり。ある種迷走していたけど、思いつく限り行動する中で、気付きもあったんです。」
行動し続けてみた彼女が行きついた先は、『無理して目標を見つけなくてもいい』ということだった。
「空っぽな自分を受け入れ、認めてあげるんです。まだ若いんだから、明確な目標もスキルもなくてもいい。とにかく行動し経験を積みながら、視野を広げていけばいいんだと気付いた。」
予測できなかったコロナ禍は、里村さんをどん底に突き落とした。
しかし、兄の一言に救われ、自分自身と向き合い、肯定することができた。
彼女にとって、必要な時間だったのかもしれない。
受信する側から、発信する側へ
「仕事塾」との出会い
大学入学後、コロナ禍で時間を持て余していたころ、兄があるきっかけをくれた。
「兄の知り合いが代表を務める『仕事塾』というサロンを教えてもらったんです。就活を有利に進めるためのコンテンツもたくさんあると聞いて、すぐに興味を持ちました。」
将来の夢もなくなり、就活に不安を抱えていた里村さんにはぴったりだった。
毎週、代表の高村一光さんによるオンラインセミナーに参加し、無知だった社会のノウハウが、徐々に身についていくのを感じていた。
少しずつみえてきた「次の目標」
大学3年生になったころ、自分の就活について、深く考えることが増えた。
「今まで『定量的な結果』を残したことがないなと思って。ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)作りとして、〇円売り上げ達成というような具体的数値の実績が欲しかったんです。」
長期インターンをすれば、実績を積めるかもしれない。
そう思っていたころ、運よく仕事塾代表の高村さんが、里村さんを欲してくれたのだ。
「長期インターンとして『広報のポジション』をやらないかと言ってもらえたんです。もちろんすぐに快諾しました。」
いきなり任された「広報PR責任者」
「仕事塾」を運営するgood luck株式会社で長期インターンをすることになった里村さん。
「広報PR責任者」という大きな役職は、プレッシャーに加え、苦労も大きかった。
「新設ポジションだったので、完全にゼロからのスタートで。最初の目標の立て方さえもわからず、代表にアドバイスをもらいながら、とにかく進み続けました。」
まずは「月2本メディアに掲載してもらう」ことを目標に、宣伝活動をすることに。
多数のメディアに自社宣伝をし、取材を売り込む日々。
断られることなど当たり前だった。
しかし、続けていく中で、徐々にアピールのコツが掴めてきたという。
「営業をかけ続けていくなかで、少しづつ刺さりやすいコンテンツが分かってきたんです。一番拾ってもらいやすかったのは、『生の学生の声』。自社では、サロンに集まる多くの学生の、リアルな声を届けられるんです。需要の多さで、自社の一番の強みに気付くことができました。」
こちらから提供できる価値、特徴を洗い出し、相手の需要と重ねてみる。そこにマッチする部分が、一番のセールスポイントとなるのだ。
「本当に大変でしたが、PRの立ち上げから運営まですべて一人でできたのは、実力も自信もつきました。」
最終的に、10件以上のメディア掲載を達成した里村さん。
「定量的な結果を残す」という当初の望みも叶えることができた。
ひとめぼれした「おから」での長期インターン
里村さんは、3年生の1月から約半年間、株式会社オカラテクノロジズでも長期インターンをおこなった。
「おからを通して人と地球の健康を守る」をミッションに、おからを主原料にしたヘルシーな食品を開発・販売する会社だ。
こちらも、代表と知り合いだった兄が、その存在を教えてくれた。
「会社を調べていくうちに、おからの魅力にハマってしまって。ダイエット効果もありタンパク質も豊富。フードロスの救世主にもなると知り、将来性を感じたんです。」
この会社では、長期インターンや正社員の募集はしていなかった。
ところが、すぐに諦めないのが里村さんの魅力。
なんと、自ら代表の山内康平さんに「どうしてもここで働きたい!」と強い熱意を伝えたという。
その結果、長期インターンをさせてもらえることになり、広報担当として、Instagramの投稿作成やアンバサダーとの連携をおこなった。
長期インターンは一度終えてしまったが、里村さんは「今後また関わっていきたい、魅力溢れる会社だ」と話してくれた。
楽しんで働き、生きていくために
綿密な人生計画をたてて、アナウンサーという夢に向かっていた里村さん。
夢を諦めることになっても、立ち上がり、たくさんの経験を積んで、今がある。
「仕事での成長は大事です。頑張らなきゃならない局面もたくさんある。ただ、目の前の数値に追われるような生活で、楽しくなくなってはもったいないと思うんです。」
社会人1日あたりの「仕事」が占める割合は、半分以上だと言われる。
どうせなら、その時間を楽しめる人で溢れる世の中にしたいと、里村さんは話してくれた。
これは、仕事塾の理念も同じである。
そして、楽しく働き続けるためには、自分を大事にすることも忘れてはならない。
オンオフをしっかり決めたり、趣味に時間を注いだりして、感性を磨く時間もいいだろう。
「今後『長期インターンをすべき』という風潮は高まるでしょうが、やるべき思考になりすぎず、自分のやりたいことの手段として、長期インターンがあれば一番いいなと思います。」
もしも今、「やりたいことが見つからない」「漠然と社会人への不安を抱えている」という人がいれば、是非仕事塾を覗いて見てほしいと思う。
学生のうちに、ビジネススキルを身に着けられるのはもちろん、優秀な学生仲間との出会いが財産となり、夢への選択肢を増やすきっかけになるかもしれない。