「振る舞っているのはアホそうだけど、ちゃんとやるところはやってるタイプってよく言われます」
そんな風にこれまでの自分のことを話してくれたのは、横浜国立大学3年生の古堅 秀都(ふるげんひでと)さん。
「ダジャレを思いつくのが得意なんです。」
そう語る彼は、学生時代は友達が多くて、みんなを笑わせる存在であったという。
野球に勉強にビジネスにと、さまざまな領域で自分なりに試行錯誤を繰り返しながら成長し続ける古堅さん。
大学1回生の夏のある出会いをきっかけに長期インターンをはじめ、現在は2社目で活動中。彼が何を目指して、何がきっかけで長期インターンをしているのか。
彼の熱中できるものと、その先にある想いから、長期インターンに参加するか悩むあなたに、ヒントになるものを届けられたらと思う。
野球と勉強に熱中していた学生時代
春夏連覇、地元の高校球児に魅せられてはじめた野球
沖縄生まれ、沖縄育ちの古堅さん。
高校3年生までの9年間熱中していた「野球」に出会ったのは小学4年生の夏。
この年は地元の興南高校が甲子園で春夏連覇を成し遂げた年だった。
準決勝の逆転勝ちから、決勝は13-1の大勝利。
テレビの前で見ていた少年は、全力で野球に向かう高校球児の姿と、それをみんなで応援する島民の姿に魅せられた。
「野球や、ってなったんです。」
言語化できない魅力がテレビの中に、そして、周りの人にあったのだ。
「練習して結果を出すのが楽しかったっていうのと、PDCAを回す回数が多くて。さっきはこれでめっちゃ悔しくて、次になおして打てるようになっていく。」
「小学校は全然(試合に)出れなくて、中学も野球が厳しいところで出れなくて。高校になって出られるようになって、その過程も含めて楽しかったなぁ」
まじめに練習して、自分で自分の課題を見つけて解決していける。きっかけは高校球児の姿だったが、どんどん野球自体に魅せられていった。
さぼらない優等生、だけど、おもしろいやつ
「自分ダジャレ得意なんですよ。頭の中ですぐ思いついて、周りには尊敬するわ、って言われる感じで。」
野球をしながら、課題は締め切りまでに出して、級長(学級委員長)もするような、いわゆる優等生。ただ真面目なだけじゃなく、ダジャレが得意でみんなを笑わせるキャラだった。
お母さんが勉強熱心で、小学校低学年の頃は毎日放課後一緒に宿題をしてくれていた。そのおかげで、なにか目的があった訳でもないが、勉強するのが当たり前になっていた。「褒められたい」の一心だった。
野球を始めてからも勉強を続けられたのは、親がつけてくれた習慣と、指導者の言葉があったから。
「野球を始めたときに『学校生活からだよね』とよくいわれたんですよね。野球だけやってたらいいんじゃなくて、学校生活とか勉強、課題とかも大事だよねっていうのがあったので。」
ただ、周りの空気感として「出る杭は打たれる」と感じていた中学高校の学生時代。勉強も頑張るけど「一緒にいて楽しい」と思ってもらえるようにボケたりするようになったという。
「中二の頃、何が嫌って、真面目キャラだけって思われるのが嫌だったんですよね。中学校ってまあまあみんなヤンチャな時期だし。そういう時にひとりだけ真面目な子がいたら『なんだよお前だけ真面目な』と思われて距離感が出るよりは、ずっと友達でいたいから、そこまで真面目さを見せないようにしていた。」
さぼり方を知らず、課題は朝まで起きてでも締め切りまでに出す高校生。
そんな彼は、友達と笑い続けるために自分のキャラをつくって生きていたのだ。
ビジネスという世界との出会い
そんな彼が、自分の中から湧き出るひとつの想いと出会う。
高校2年生の春休み。友達とカフェで勉強して、息抜きにバッティングセンターに行っていた時のこと。
「バッティングセンターで苦手な変化球を打ちたい。カフェが併設されてるバッティングセンターがあったらいいのに。」
ないからつくろう、と思ったのがビジネスに興味を持ったきっかけ。バッティングセンターは初期費用がかかるので、老後の余暇でつくりたいなと今は考えている。
ビジネスにはじめて挑戦したのは高校3年生の2月。
推薦で受験が終わって暇なときにはじめた、SNSを使った「中高生と塾のマッチング」。
初挑戦は、塾側との連携がうまくいかず、サービスの必要性も見失う。そして、半年ほどで幕を閉じた。しかしこの経験が、彼がビジネスに熱中する引き金を引いたのだった。
一度も耳にしたこともなかった「長期インターン」との出会い
この社長さんと一緒に働きたい、と選んだ1社目
塾の紹介ビジネスに気持ちが乗らず、続けるか悩んでいたとき。古堅さんの運命を変える出会いがあった。
大学のカリキュラムの中にある「アントレプレナー入門」という講義。
将来自分でビジネスがしたい、と思っていた彼もまた、この講義の受講生だった。
そんなある日の講義で、株式会社ipocaの社長である一之瀬卓さんと出会った。
株式会社ipocaは「ミセシル」という商圏分析ツールと「アスシル」という需要予測モデルを小売流通企業、つまりスーパーに提供している。
たまたま外部講師として来ていた一之瀬さんは、自身が起業するまでの想いといまの事業にかける想いを語ってくれた。
「この社長さんと一緒に働きたい」
長期インターンの存在も、「インターン」という言葉自体も知らなかった古堅さんにとっての大きな出会いだった。スーパーでの産業廃棄物や、毎日安売りされる商品の生産量に疑問を感じていた彼は、当時の新規事業である「アスシル」に惹かれた。
そして授業の後にDMを自分から送ったのをきっかけに、彼のインターン生としての生活は始まったのだ。
「易きに流れるな」気の緩みを締めてくれた社員さんの一言
「この社長の下で働けるなら何でもする!」と意気込んでいた。想いに共感した新規事業である「アスシル」の開発に関わることになった。
業務は、未経験のプログラミング。何度もエラーが出て、解決のために日本語や英語を駆使する日々。時間を忘れて熱中できるものとの出会いだった。
しかしインターンをはじめて2,3か月がたった頃、ひとつのミスを犯す。オンラインミーティングで寝坊。
過去、優等生で締切に間に合わないことのなかった彼にはありえなかった失態。大学に入って生活が一変し、気持ちが緩んでいたことを表していた。
「易きに流れるな」
この社員さんからの一言で、いかにだらけていたかを痛感した。
下がっていた基準を改めて引き上げ、インターンに関わる。社会人として求められるひとつの基準を知ると同時に、学生であるありがたさと社会人の大変さを知った。
徐々に大きくなっていく、やりたいこととの乖離
社長の想いに共感して働くことになった株式会社ipoca。では、なぜ彼は離れる意思決定をしたのか。
「ちゃんと将来のこと考えたらもっとやることあるよな。」
働き始めて1年半くらい経ったときに浮かんできた疑問。社長への共感は変わらないが、「自分で事業したい」という想いも残っていた。
逆算ではなく積み上げ方式で進んできた人生。目の前にある、熱中できるものに全力で取り組んできた。
そんな彼にとって株式会社ipocaは大学生活で見つけた熱中できるものだった。共感できたからこそ、将来自分がやりたいことに繋がっていると、信じて疑わなかった。ただ、「会社員じゃなく自分で」と思う彼のなかで、将来と今の行動の乖離が徐々に大きくなってきたのがこの頃だった。
マーケティングが強くなりたい、と選んだ2社目
「マーケ領域で力をつけたい、実績を作りたい」
将来は、地元である沖縄の平均賃金の安さと貧困という課題を解決したい。だから、お金を生み出すために必要なマーケティングの領域で経験を積み、実績をつくりたかった。
そんな時に友達の紹介で出会った株式会社estra。現在は株式会社estraで2社目のインターンをしている。即戦力エンジニアになるためのプログラミングスクールを開講している。
業務内容は、現行のWebサイトの改善。「根拠があるなら全部変えてもいいよ」というスタンスで仕事を任せてもらっていて、フィードバックも手厚い。個人の裁量が大きい仕事が向いているなと気づいた。
ただ、ここでのインターンも勢いで決めた部分があった。業務内容は自分が関わりたかった「マーケティング」という分野である。しかし、業界は自分が将来関わりたい業界ではない。ここでどれだけ自分が身につけたい力が身につき実績がつくのか。彼はまた、悩みながら進み続ける。
目の前にあるものに熱中するから見失う理想の自分
「(長期インターンを2年間してきて)まだ全部じゃないけど、社会の一部を知れた。インターンで1日8時間入ったら、『社会人はこれが月曜から金曜までか』って生活が想像できた。あと、好きなこと嫌いなこと、向いてる向いてないが結構わかるなぁ。」
バイトと違い、任される領域が増える「長期インターン」。業務の幅が広く、多くの社会人と関わる機会がある。だからこそ、自分が何が得意で、何が苦手なのかがわかりやすい。
学生時代からさまざまな経験をしてきた古堅さんが熱中できたものの共通点は何なのか。
「そこまでうまくもなかった」と語る野球も、「賢かったわけじゃない」という勉強も、初心者で始めたプログラミングも。彼が熱中していたと語るものは、自分の成長が実感できるもの。
ただ、目の前の熱中できるものに本気で関わり続けてきたから、将来との逆算が苦手。なにか目標もあったわけではなく、ただ褒められるために続けてきた勉強。社長と事業への共感という、その時の心の動きで始めた長期インターン。
これまでの意思決定を間違えていたとは思わない。しかし、やりたいことがあるなら逆算が必要だということに気づいた。
そして、今熱中している「ビジネス」という領域。
「野球は試合をつくってもらう。練習試合を組んでもらったり、練習のスケジュールを立ててもらったり。ビジネスは自分が全部決めなきゃいけない、それが大変だけど楽しい。」
「将来自分でビジネスをするためのスキルや経験を身に着けたい」と選んだ2社目。しかし、この会社も勢いで決めた部分がある。そのため、逆算ができていたかと聞かれたら、胸を張って「はい。」とは言えないという。野球も勉強も、なにかからの逆算ではなく、ただ目の前のことに全力投球していただけ。
そんな彼も、「将来沖縄に貢献したい」という想いの実現のため、自分で教育系のイベントを開催している。
その場での自分の心の動きと将来のなりたい姿。どちらもすごく大切で、でも、繋がらないときもある。そんなふたつを大事にできる生き方をこれからも彼は探し続ける。まだ彼も、なりたい自分になるための旅の途中なのだろう。
「やってみたい」と思うなら周りを気にせず挑戦したほうがいい
最後に、長期インターンに少しでも興味がある人に向けてメッセージをいただいた。
「ほんとに興味があるならやったほうがいい。けど、『やらないといけない』からスタートするのはよくない。就活のためのインターンはもったいない。学生には4年間あるとはいえ、貴重な時間。インターンによって失われる時間もある。」
「インターンをやることによって、将来自分がどういう仕事・スタイルが向いてるとか、これまで絶対経験できなかったことを経験できるから、やるのはありだと思う。」
挑戦するから見えることもある。でも、挑戦するから失うものもある。社長にも事業にも共感しても、ずっと働くと決め切れない場所で働くのは、将来のために必要なのか。古堅さんはたくさん悩んで、離れる意思決定をした。
長期インターンに興味を持つあなたは、何のためにインターンに関わろうと思っているのか。大学生活の4年間は、「自分にとって何が幸せか」を考える期間ではないだろうか。「就活のため」じゃなく「自分の人生のため」にインターンを選ぶ人が増えてほしい。
社会人として社会に出る前に、社会や自分を知ることは、あなたの人生の選択をよりよくするヒントになるのではないかと思う。