「鬱になって何もできない時期を経験しているからこそ、アクセル踏めるときに踏んでおきたいって思うんです。」
そう話すのは、今回お話を聞いた、金子 紗耶加(かねこ さやか)さん。
神奈川に住む大学3年生だ。
オンラインインタビュー当日、電話の向こうの彼女は長野県の白馬村にいた。
「年明けから2月末まで、リゾートバイトをしに白馬にきているんです。」
長期インターンと並行しながら、バイトとスキーを楽しんでいると話すさやかさん。
ハキハキと話す、元気はつらつな姿が印象的だ。
彼女は現在、クラウドファンディングサービス「READYFOR」など寄付・補助金領域に事業を展開するREADYFOR株式会社で長期インターンをしている。
クラウドファンディングとは、インターネットを通して自分の活動や夢を発信することで、想いに共感した人や活動を応援したいと思う不特定多数の人から資金を募る仕組みのことだ。
プロジェクトは途上国支援や商品開発、自伝本の制作など多岐にわたる。
今回のインタビューでは、さやかさんの波乱万丈の人生を辿りながら、なぜインターンをするに至ったのか、そしてインターンを経て感じた変化などを聞かせてもらった。
最初のつまずきは、高校受験。
生まれは山形県、高畠町。大自然の中にポツンと家がある、そんな場所だったそう。
「今でも自然やスキーが好きなのは、ここでの生活があったからだと思います。」
その後、両親の離婚をきっかけに神奈川へ。さやかさんが中学生になる年だった。
中学校では成績優秀、運動もそこそこ。
友達にも恵まれ、まさに全てが順風満帆。
高校受験も志望校に十分合格できる成績だったという。
「問題なく受かると思っていたら、受験当日にインフルエンザにかかっちゃって。」
十分な力が発揮できず、結果は不合格。
行くつもりのなかった私立の高校へ進学することになった。
高校では中学から続けていたテニス部に入部。
「元々いきたい高校ではなかったし、正直授業はあんまり楽しくなかったんですが、部活だけはすっごく楽しかったんです。」
しかし、1年生の夏ごろからさやかさんに変化が訪れる。
できることより、できないことが増えていく。
大きな変化とぶつかった高校時代。
「鬱になったんです。正確にいうと、その時は鬱とはわかってなかったんですけどね。」
家庭内の人間関係が理由で、鬱を発症。
どのように症状を自覚したのだろうか。
「初めは、朝起きれなくなったり夜寝れなくなったり。次第に、何をやるにしても集中できなくて、やる気も湧いて来なくなって、最終的に学校に行けなくなりました。」
「でも部活だけは好きでよく顔を出していましたね。不登校だけど部活だけ行くやつ、みたいな。それでも大会当日に休んで迷惑をかけたこともあって、周りからはサボっているように見えていたと思います。」
できないことばかりが増え、さやかさん自身も戸惑っていたそう。
「記憶力がどんどん低下して、勉強に全くついていけなくなって。パニックになっちゃうこともありました。」
(高校生時代のさやかさん 写真右)
診断が下されたのは、高校2年の夏ごろ。
「わかったときは正直ほっとしました。あー、やっぱりそうか、朝起きれないのも記憶力が落ちているのも、これが原因だったのかって。」
「”鬱”と名前がついたことで私の言動に周りも理解してくれるようになって。症状は変わらないけど、気持ちは少し楽になりましたね。」
しかし、鬱の症状もあり学力は低下。志望大学は不合格だった。
「現役で受かっていた大学もあったんですが、私自身とても通える状態じゃなくて浪人を決めました。」
諦めることから始まった、浪人1年目。
「浪人1年目は、受験勉強を諦めてて。まずは人間らしい生活が送れるようにと考え、バイトを始めました。」
バイトを複数掛け持ちし、忙しい日々を送っていたという。
「バイトを通じてできることが少しづつ増えていって、自分の生活を段々と取り戻していく感覚がありました。だけど、勉強は二の次だったので、その年の受験も志望校は不合格で。」
決意と決断で突き進んだ、浪人2年目。
「今年受かったところに絶対進学しようと、心に決めていました。」
鬱の症状も少し落ち着きを見せ、予備校にも通ったという。
「浪人2年目に親が予備校に通わせてくれたんですが、鬱で朝起きれなかったり、集中できなかったりで、途中から行けなくなってしまって。」
「結果、志望校ではないもののとりあえず合格することができました。当時は安堵の気持ちが大きかったです。」
自分らしさを取り戻すきっかけは、コロナだった。
「ここまで話した通り、今までの受験を全て失敗しているんですよね、私。」
あはは、とあっけらかんとして話すさやかさん。
「それでも、大学生になれたし好きなことして楽しもう!と考えていました。」
大学入学後は、ジューススタンドのアルバイトを始めた。
県外の店舗にヘルプとして手伝いに呼ばれるほど、熱心に励んでいたという。
しかしその最中に訪れた新型コロナウイルスによりバイト先の経営は悪化。
その一方で、コロナによる変化はさやかさんにとって良い一面もあった。
「大学の授業がリモートになり、バイトのシフトも減って、おうち時間が増えたんです。そしたら鬱の症状が劇的に改善されて、今なら何か新しいことできそうかも!って思えてきて。」
次のステップとして、何か新しいことを。
思いついたのは、”長期インターン”だった。
長期インターンを始めたのは大学2年の秋頃。
インターン先であるREADYFORとの出会いは意外にも、インスタグラムだったんだとか。
「インスタのストーリーズで、高校の友達が長期インターンの募集をしていたのが目に入って。ちょうどインターン先を探していたタイミングでしたし、信頼する友人の紹介だったので、即連絡をしました。」
その後、とんとん拍子に面接へ。
「実はその時、クラウンドファンディング業界についてなにも知らなくて。友人への信頼感と、面接してくれたREADYFORの方の人のよさが決め手になりました。面接で、素でぶつかっていった私を丁寧に受け止めてくれたことがすごく嬉しかったんです。」
「『まだまだベンチャー企業だからやることもたくさんあるし、カオスな部分もあるよ』と面接では聞いていて。よくわかんないけど大変なんだな、とそのときは考えていました。」
知らないことばかりの、新しい環境へ飛び込む。
そこに不安や迷いはなかったのだろうか。
「ここでやらなきゃいつできるかわからない!という勢いだけでした。鬱でどん底の生活を経験したからこそ、アクセル踏めるときに踏んでおかなきゃ!と思ったんです。」
アクセル全開で。目の前のことに愚直に向き合った日々。
さやかさんの長期インターンは、クラウドファンディングのパートナーに関連する業務を行う部署で始まった。
「READYFORにクラウドファンディングプロジェクトをご紹介くださる、パートナーさんとの提携業務をサポートしていました。そういったパートナーさんを探すことや、契約に関する庶務などをサポートするイメージです。」
「今は部署を異動して、ウェビナーなどのイベントに関するお手伝いをしています。イベントの下準備をしたり、動画を作ったり、当日のイベント進行をサポートしたり。この他にも部署やチームの垣根を越えて、細々とした作業など頼まれたことにも取り組んでいます。」
一人だけど、孤独じゃない。
READYFORでの働き方とは。
さやかさんはREADYFORに入ってからずっとフルリモートで働いているそう。
勤務は週15~20時間程度だが、白馬にいる現在は時間数を少し減らしてもらっているらしい。
初めての長期インターンシップ。わからないことも多い中、一人で働くことに寂しさや不安を感じないのだろうか。
「最初はREADYFORのメンバーの皆さんから『リモートで大丈夫?』と心配されたんですが、全然平気でした。」とニコニコ答えるさやかさん。
フルリモートという働き方が彼女の性格に合っていたのだろうか。
「それもあると思いますが、フルリモートでもコミュニケーションがとりやすい環境と人が揃っていることが大きいかも。」と彼女はいう。
「自分で調べてもわからないことがある時、部署の皆さんに聞くとすっごく丁寧に教えてくれるんですよね。急ぎで確認したい時は、『今電話いいですか?』って言える雰囲気ですし。リモートでも、会社全体の雰囲気がすごく良いから、孤独感ないんですよ。」
「楽しい」の源は、暖かい人たちとのコミュニケーション。
話を聞く中で度々さやかさんの口からでてきた、READYFORの”人のよさ”。
これを強く感じたエピソードを聞かせてくれた。
「以前、就活で圧迫面接にあってしまって。面接後にそのことを何気なく社内の雑談チャットで呟いたら、たくさん反応がきたんです。しかも、その中には一度も関わったことのないメンバーの方からの励ましのメッセージもあって。
仕事もプライベートも、一緒に喜んだり助け合ったりする、そういった小さなコミュニケーション1つ1つから、READYFORで働く人の暖かさを感じるんですよね。」
感謝の言葉を原動力に、行動で返していく。
しかし、いくら働く人たちがいいからといって、仕事の全てが楽しいとは限らない。
働く中で感じる難しさやしんどさを率直に聞いてみた。
「うーんあんまり思いつかないけど、」と前置きをしてからさやかさんはこう続ける。
「去年の11月ぐらいに、社内にある契約書類に記載された内容の一部を抜粋して表にまとめる作業をしていたのですが、それが結構しんどかったですね。500社近くの契約書をまとめました。」
膨大な数の契約書をまとめ直す。時間だけでなく、気も使いそうな作業だ。
「契約書なので、資料も多いし、内容も難しくて。昔のものだと当時の担当者がいないこともあって大変でした。メンバーの方が最終チェックしてくれるとはいえ、自分の中ではミスできない緊張感もありながら、量が量なのでじっくり時間をかけるわけにもいかず。向き合うしんどさみたいなものはありましたね。」
確かに。想像するだけで気が遠くなりそうな作業だが、どうやって乗り越えたのだろうか。
「根気ですかね。(笑) 契約書の内容がそれぞれ違うので、とにかく1つずつ地道に進めていきました。」
「それから、部署の皆さんからの『ありがとう!』や『助かった!』の言葉で頑張れたのもあります。お礼を言われるためにやっているわけではないけど、感謝されるとやっぱり嬉しいですし、言われた分、私も1%でも多く行動や結果で返していこう!と思うんです。」
“組織で働く”がグッと身近に。
想像できなかった働き方を、自分が体現していく。
READYFORで長期インターンを始めて、約1年4ヶ月が経とうしている。
ここまでの経験を振り返り、どのような変化を感じているのだろうか。
「まず、基本的なビジネススキルがつきました。長期インターンを始める前は、PCの基本も知らなかったのですが、やっていく中で資料の作り方やメールの打ち方を学ぶことができました。」
「あとは、会社で働くイメージが沸いたことも大きな変化ですね。私は家族や親戚にいわゆる”会社員”がいなかったので、会社や組織で働くということがよく分からなくて。
だからこそ、実際に自分が長期インターンをすることで体験しながら理解できたのがとてもよかったです。」
できないことを受け入れて、一歩ずつ前へ。
「ただ、自分のできない部分と向き合わなきゃいけない場面もあって…」と彼女は続ける。
「長期インターンを決める時もそうだったんですが、基本的に勢いで動いちゃうので、細かいところまで考えられてなかったり、見落としたりしちゃうんですよね。仕事をするうえでそういった小さなミスを無くしていけるように頑張っています。」
迷っている間にも時間はすぎていく。やれる時に、やろう。
最後に、長期インターンを検討している学生さんにメッセージをいただいた。
「既に長期インターンをやるかどうか迷っているのであれば、始めてみるといいと思います。迷っている時間がもったいないな、と。迷っているうちに社会人になってしまうより、まずはやってみる。それで合わなかったら辞めてもいいと思います。」
「とにかく、やらないことには合う合わないもわからないので、もし迷っているならぜひやってみてください。もちろん、無理にやる必要はないですけどね。」