「飽き性だけど、好きになったものには責任をもって関わり続けられる。」
そんな風に自分のことを話してくれたのは、インタビュー当時茨城大学4年生の大瀬美結(おおせみゆ)さん。自分が「良い」「好きだ」と思える商材に関わり続けながら、これまでの経験を堂々と話してくれる大瀬さん。今回はそんな大瀬さんの人生を紐解いていこうと思う。
母の教えは「やってもやらなくても自己責任」
長崎県で生まれ、両親とふたりの弟に囲まれて生活をしていた。
自身のことをブラコンだと語る彼女は、ふたりの弟のことを「自分より頭がいい」「自分より愛嬌がいい」と表現した。
少し年の離れた三姉弟は、誰かに比較されることもなく、それぞれが自分の道を生きている。
彼女もまた、自分の好きなものを大事にしながら生きている一人だ。
ただ、幼少期の彼女は飽き性で、小学校低学年ながら過去に経験のある習い事は片手に収まらないほど。
「水泳も平泳ぎまでできたし、ピアノもある程度楽譜を見たら弾けるようになったし。」
こう語る彼女は、興味を持って習い事をはじめるものの、数年ですべて辞めていっていた。
理由は、それで生きていく気はないから。
ある程度「できる」といわれるレベルに到達すると、その先に目指すものがなくなり、続ける理由を見失う。
母親のスタンスは「辞めてもいいよ、その責任は自分にあるけどね」。習い事だけでなく学校の宿題に対してもそのスタンスは変わらず、母親から宿題を強要されることはなかった。
ただ、結果主義で、結果が出ないのはすべて自分の責任になるだけ。
そんな彼女が12年以上継続していたものがある。それが、バレーボールだった。
小学4年生の春から、大学で引退するまでの計10年間部活として続けてきた。
きっかけは友達からの「身長大きいからやらない?」という何気ない誘い。過去にサッカーを経験し、チームプレーに魅力を感じていた彼女はバレーボールを始めることにした。
学年が上がり任せられた「エース」という立場。
得点を稼ぎ、勝てば目立って褒められるし、負ければ自分の責任になる。
「私はエースだからやらなきゃいけないんだ、何があろうがエースだから試合に出なきゃいけないんだ。」
そんな風に自分に言い聞かせながら続けていたバレーボール。
何度かやめようと思ったタイミングもあったが、そのタイミングでいつも待ち受けているのは「敗北」。
責任を果たせず、自分のプレーにも満足できず、辞めるにやめられないタイミングを重ね、結果として、12年間バレーボールを続けていた。
「変わりたい」と思って参加したセミナー
大学進学はセンター試験で失敗をし、志望度の低い茨城大学に進学。
中高一貫校に通い、6年間大学受験に向けて勉強してきた日々。受験で失敗して自己肯定感が低下。「どうせ自分なんて変われない」とずっと思っていたのだ。
「受験には失敗したけど就活では失敗したくない。」
そんな時にふと目にしたのがInstagramの広告。当時開講されていた、女子大学生向けのキャリアデザインスクールの無料体験会だった。
3か月間でWeb関係のスキルを獲得できるというもの。大瀬さんはWebマーケティングについて学んだ。
これが彼女にとって転機となった。「やればできる」と感じさせてくれた環境と、自分のために、自分でお金をかけた経験が、彼女にとって大きな力になったのだ。
スクールが終わってすぐ、長期インターンの募集を目にした。自分が変わることができたこの環境だからこそ、誰かに届けたい。そんな想いで彼女は長期インターンをはじめた。
外だけじゃなく内にも目を向ける意識
1社目での業務内容は、無料相談会に参加してくれた大学生に対するスクールの営業。なぜ体験会に参加したのかを紐解き、商材を売る業務だ。
彼女はこの長期インターンのなかで二度の転換期を迎える。
一度目は大学2年生の夏。インターンをはじめて半年たった頃。
事業拡大に伴い圧倒的な人員不足に襲われた。
商談以外の準備の時間はすべてサービス残業。どんどん業務に圧迫されていくが改善されない職場環境にモヤモヤを感じずにはいられなかった。
企業だから顧客がいて、顧客を大事にしないといけないことには変わりはない。だからといって、内部の環境や人間関係を蔑ろにしていいわけではない。
インターン生がインターンをしている目的や、社員さんたちがどんな成長機会の提供を考えているのか。お互いに考えながらもすれ違っていた部分をすり合わせることができた。
4年生に上がってからはスクールの受講生サポートのリーダーも任された。
もちろん受講生の満足度も大事だが、それだけではなく、インターン生のやりがいや成長に対してもフォーカスをあてていた。
「メンバーも商材も好きだったから。どうやったら楽しくできるか、ストレスなく働けるかを意識していました」
仲間のことが大事だからこそ考えられる視点である。そして、組織として一つの目標に進んでいくためには、すごく重要な視点なのではないかと思う。
あっけなく散った事業撤退
二度目の転換期は大学4年生に上がった頃。約2年間かかわってきた、女子大学生向けのスクール事業の撤退が決まった。
徐々に感じる衰退していく感覚。「このまま、いつかなくなるのかもしれない」と思っていたが、想像以上に撤退のタイミングははやく訪れた。
現状を維持することが当たり前ではないビジネスという領域の、厳しさを痛感した。そして、あっけなく消えていく大好きだったサービスに感じる悲しさ。
どれだけ自分が好きだと思っていても、赤字が続くような、進んだ先に赤字が見えているようなサービスは、続けられない。それが、ビジネスの現実だった。
だから、好きなら、大事にしたいなら、本気でやるしかない。できない理由を探すのは簡単だけど、やらなかったら後悔するのは自分自身。
大瀬さんは事業が完全に撤退したのを見届けて、インターンを辞めることにした。別業務への異動も可能だったが、彼女が好きだったサービスは、もうないから。
なくなると決まってからはあっけなくて、何もできないからこそ、目の前にある間に、大事にしないといけない。彼女がそう確信した瞬間だった。
新天地での新たな挑戦
長期インターンでの経験から、人のターニングポイントにかかわりたい、と思うようになって動き続けた就職活動。その中で、就活エージェントに紹介してもらったのがいまの内定先だ。
「営業の時間を1年間ブランクとして置きたくないなと思って」
これまで2年間積み上げてきたスキルを伸ばして就職するために、彼女は2社目の長期インターンを決めた。
2社目は、エッセンシャルワーカー向けの人材紹介を行っている。このサービスなら自分が納得感を持って売れる気がする、と思い、この会社でのインターンに応募した。
これまでとは違い、今しているのはテレアポ業務。営業先も個人ではなく企業。エッセンシャルワーカーを雇いたい企業に対して、求人の掲載を打診する。
テレアポに対してなんとなく抱いていた恐怖。実際に経験してみても、窓口で電話を切られたり、話を聞いてもらえなかったりと心が折れそうになることも多い。
ただ、ニーズに気づいていない層にテレアポを続けることの意義も感じるようになった。
いい商材と思えるからこそ、彼女はここまで続けられるのだろう。内定までの期間も自分のスキル向上のため、そして、このサービスに出会う人たちのために取り組み続けた。
好きなものをもう二度と失わないために
彼女とのインタビューの中で何度も出てきた「責任」という言葉。任されている責任があり、やると決めたことに責任がある。
「やってもやらなくてもいいよ、自己責任だけど」
女の子だから、と父や祖父母に言われ続けた彼女に、弟たちと同じように母親がずっとかけてくれていた言葉だ。きっと今の彼女の責任感の強さは、この母親からもらったものだろう。
彼女は好きだったサービスを失った。似たようなものはこの世界にいくつもあるかもしれないが、そのサービスはもう戻ってこない。ただそこには、頑張り切れなかった自分に対して責任を感じる彼女がいる。
彼女はきっと、これからも誰かの人生のターニングポイントに関わり続ける。そんなサービスが好きだから。感謝される瞬間に何度も関わってきたから。
好きだと思えるものを、好きだと思える仲間たちと。
切磋琢磨して、お互いに任されている業務に責任を持ちながら。それでいて、お互いに「おめでとう」と誰かの成功を喜べるような。
彼女が理想とする環境で、彼女はこれからも挑戦し続ける。
やらない後悔よりやる後悔
最後に、この記事を読んでくれている人に向けて、大瀬さんからメッセージをもらった。
「やらずに後悔したらずっと残るけど、やったことによる後悔って意外と消化できるものだと思うので、一回挑戦してみて違うなと思ったら戻ってきてもいいんじゃないかなと思います。」
やればよかった、という後悔はずっとつきまとうけど、もっとこうしたらよかったな、という後悔は他の何かのために活かすことができる。
業務内容や会社の文化が自分に合わないと思ったらやめてもいい。長期インターンはミスマッチを防ぐために存在するものだから。
「学生のうちの失敗は別の人が責任を追ってくれるから、責任能力が低いうちにやれるだけやってみて、自分で責任を追わなきゃいけない時を待ってもいいんじゃないかな。」
「責任をもってすることには変わりないけど、給料とか生活に影響はないし、失敗も込みでインターン生だと思って雇っている会社がほとんどだと思う。」
任されている以上責任をもって仕事に取り組むことが必要になる。しかし、何か失敗してしまったとしても学生インターンが責任を追及されることはない。
だからこそ自分がやってみたいと思う挑戦してみたらいいのではないか。